- 片流れ屋根の住宅は雨漏りしやすいのか?
- 片流れ屋根住宅の雨漏りを予防する方法
- もしも片流れ屋根住宅で雨漏りしてしまった時の対処法
片流れ屋根は
- モダンな見た目でオシャレ!
- 比較的価格も安め!
- 狭い土地でも間取りを広く取りやすい!
- 太陽光発電を設置しやすい!
といった様々なメリットで人気があります。最近では、いたる所で片流れ屋根を採用した住宅を見かけるようになりました。
しかし、やはりいいことだけではありません。片流れ屋根には、デメリットも様々。じつは、そのデメリットには『雨漏りしやすい』という特徴が含まれているんです。
片流れ屋根はここ10年ほどで増えてきた構造。ですから、比較的築年数が浅い建物が多くなります。つまり…『新築なのに、雨漏りしやすい』状態ということですね(汗)。
ですが、やはり見た目や価格など、様々なメリットがあるのも、また事実。
そこで、片流れ屋根を採用しつつ、しっかりと雨漏りを予防する方法、そして『万が一雨漏りしてしまった際の対処方法』までをこの記事にまとめておきました!
ぜひ参考にしてくださいね。
【事実】片流れ屋根自体は雨漏りに”強い”屋根構造!

「え?どういうこと?」
となったかも知れませんね(笑)。何しろ、ほんの少し前に『片流れ屋根は雨漏りしやすい』といったばかりですから…。
じつは、片流れ屋根は、その構造としてはいろんな屋根の種類の中でも、雨漏りに強い部類に入るんです。
なぜなら、片流れ屋根は圧倒的に『シンプルな構造』だから。屋根というのは、基本的に『シンプルな構造であるほど、雨漏りに強い』という特徴があります。
例えば、屋根の種類を少し挙げると…
- 片流れ屋根:一枚の屋根材で構成されている
- 切妻屋根:一般的な三角の屋根。2枚の屋根材を繋ぎ合わせている。
- 寄棟屋根:4枚の屋根材を繋ぎ合わせている。
- 入母屋屋根:純和風の家に多い屋根。切妻屋根と寄棟屋根を合わせた屋根なので繋ぎ目が非常に多く複雑。
いかがでしょう?ほかの種類と比べると、非常にシンプルであることが分かりますよね。
シンプルな屋根構造であるほど、雨漏りに強い理由
じつは、屋根材同士の繋ぎ目部分というのは非常に劣化しやすく、水が浸入してきやすい『屋根の弱点部分』になります。
シンプルな屋根であるほど継ぎ目部分は少なくなります。つまり、シンプルな構造である片流れ屋根は『弱点が少ない屋根』ということ。
ですから、理論上『片流れ屋根は、構造的に雨漏りに強い』となるわけですね。
じつは、片流れ屋根は『雨漏りに強い』と評価されていることがあります。これは、構造的な目線で見た場合の評価、ということですね。
しかし、屋根構造としての評価ならばともかく…『雨漏りの専門家』としての目線で言わせていただければ、やはり片流れ屋根は雨漏りに弱い屋根、と言わざるを得ないのです(汗)。
片流れ屋根を『雨漏りに弱い』と評価する2つの理由

屋根としての構造上、雨漏りに強い…にも関わらず、なぜ片流れ屋根を『雨漏りに弱い』屋根と評価するのか。
そこには2つの理由があります。
- 屋根の弱点である継ぎ目が雨水に晒されやすい
- 家屋自体の劣化速度を早めてしまう
理由1.屋根の弱点である継ぎ目が雨水に晒されやすい
すこし構造的なお話になりますが…片流れ屋根の棟部(屋根の頂点)のすぐ真下には
- 野地板(屋根の下地)
- 破風板(はふいた、横からくる雨風を防ぐ為の板)
といった二つの繋ぎ目部分があります。片流れ屋根の棟部に落ちた雨水は、この継ぎ目部分に伝いやすくなっているんです。
これは片流れ屋根独特の一枚屋根だからこそ起きている現状なんですよ。
本来、屋根に落ちた雨水は屋根面を流れ落ちて軒先→雨樋を伝って地面などに排水されます。ところが、片流れ屋根の場合は棟部に落ちた水は(片流れ屋根の棟部分は切り立った形状なので)棟部側にも流れます。
そうして棟部に落ちた雨水が野地板と破風板の繋ぎ目にまで伝わってしまうんです。
先程も少し言いましたが…継ぎ目は雨漏りしやすい弱点部分。皮肉にも『片流れ屋根の構造が原因』で、弱点が雨水に晒されることになってしまうわけです(汗)。
野地板と破風版の境目は施工不良も起きやすい…
境目は弱点…ということは、家屋を作る業者ももちろん分かっています。ですから、基本的に防水処理をしっかりと施しているものですが…じつはこの野地板と破風板の境目、その作り方から『施工不良が起きやすい』箇所でもあるんです。
- 野地板の施工:基本的に屋根業者が担当
- 野地板より下部の施工:外壁業者が担当することが多い
という感じで『それぞれ別の業者が担当している』というケースが多いんですよね。
そのため、連携不足などによる連携ミスから、想定よりも防水処理(雨漏り対策)が弱い状態になってしまうケースが発生しやすいんです。
理由2.家屋自体の劣化速度を早めてしまう
もう1つの理由がこれ。片流れ屋根は、その構造上『家屋そのものの劣化を早めてしまう』形なんです。
片流れ屋根の住宅では軒が短い住宅が多くなります(軒とは屋根の先端であり、外壁から飛び出している部分を指します)。
なぜなら、軒が短いことで室内の間取りを広く取ることができ、見た目もスッキリ…つまり、片流れ屋根のメリットを最大限得ることができるから。ですが…片流れ屋根のように『軒が短い屋根』の場合、外壁や窓が紫外線・風雨の影響をまともに受けやすくなってしまうんですよ。
イメージとしては『小さい傘』と『大きい傘』、身体が雨に濡れやすいのはどっちですか?という感じ。答えは明白ですよね。
この紫外線や風雨の影響によって、外壁や窓が通常よりも劣化しやすくなってしまうんです。
劣化が進めば、当然ひびなどの破損も発生しやすくなります。結果、外壁など『屋根以外の箇所』から雨漏りが起きやすくなってしまうんです。

雨樋が破損しやすいのも理由の1つ
屋根の雨水は、通常軒→雨樋へと流れ、地面に排水されます。
しかし片流れ屋根は、屋根の面が一面しかありません。ですから、普通の屋根よりも一箇所の雨樋へ集中的に雨水が流れ込んでしまいます。
結果、雨樋には通常よりも大きな負担がかかることとなり、破損しやすくなってしまうんです。
雨樋が破損すると、軒→雨樋への排水活動がスムーズに行われなくなり、外壁が雨水に晒されやすくなります。これにより、さらに劣化が進行してしまうんです(汗)。
片流れ屋根での雨漏りを予防するには

ここまで、ひたすらに『片流れ屋根が雨漏りに弱い理由』を語ってきました…もしかしたら「おいおい!せっかくのマイホーム、片流れ屋根なんか採用するんじゃなかった…!」と嘆いた人もいるかも知れません(汗)。
ですが、片流れ屋根ならではのメリットが沢山あるのも忘れてはいけませんよね。
大事なのは、片流れ屋根が雨漏りに弱いことを理解し、そのうえで『予防』をしっかりと行うこと。雨漏りを未然に防いでいけば、そもそも『雨漏りに弱い』とか、どうでもいいデメリットになりますから!
片流れ屋根を採用している方は、ぜひ次の2つを雨漏り予防として行ってください。
- 定期的なチェックとメンテナンス
- 弱点部分への防水施工
予防策1.定期的なチェックとメンテナンス
まず大切なのは、定期的なチェックとメンテナンスです。以下のポイントを重点的にチェックしておくと、片流れ屋根に起因する雨漏りを予防することに繋がります。
- 外壁にヒビが入っていないか
- 外壁を手で触って、チョークの粉のようなものが手につかないか
- 雨樋が破損していないか
- 屋根塗装が剥がれている箇所はないか
これらは、片流れ屋根の家屋でよく見られる破損状況。こういった症状が発生していないか、定期的にチェックしておきましょう(特に外壁は劣化による破損が起きやすいので、要チェックです)。
高所チェックの際に誤って落下し、怪我をしてしまう…という事故がよくあります(汗)。高所を確認する際は、登って確認すると危険なので、双眼鏡やカメラのズーム機能で確認することをオススメします。
予防策2.弱点部分への防水施工を検討
ちょっと専門的な内容ですので、ご自身で行うのは難しいですが…できれば、野地板と破風板の繋ぎ目部分に水を侵入させないよう、防水の確認(と、必要に応じて防水施工の実施)をしておくとより安心です。
片流れ屋根が雨漏りに弱くなってしまう大きな理由の1つは、やはり継ぎ目が雨水に晒されやすく、そこから雨水が侵入するリスクが高いことにあります。
そこで、あらかじめ弱点部分をしっかり防水施工によってカバーしておけば、雨漏りの発生リスクを大きく軽減することができますよ。
新築の場合、基本的にはしっかり雨漏り施工されているはずです。ですから、いきなり『防水施工を!』というよりも、まずはしっかり『防水施工が施されているか』を業者に確認してもらうとよいでしょう。
片流れ屋根で雨漏りが発生したら…

もしもすでに雨漏りが発生している場合、残念ながらちゃんと修理をしない限り、自然に直ることはありません…。
ですが、片流れ屋根の場合、まだ1つの望みがあります。それは『保証』の存在!
じつは、家屋には『築10年以内に瑕疵(通常では気づけない欠陥)があって雨漏りした場合、売り主が無償で補償しなければいけない』という瑕疵保証があるんですよ。

片流れ屋根は、ここ10年ほどで一気に増えてきた構造です。そして、先ほどご説明したように、片流れ屋根は比較的『施工不良』が見られやすい形式…。
もしも施工不良が原因で発生した雨漏りであれば、この保証に基づき、無償(売主負担)修理ができるかも知れません!
ですから『築10年以内』という条件を満たしているようであれば、雨漏り修理業者に連絡をする前に、まず一度ハウスメーカーさんに連絡してみるといいでしょう。
明らかに施工不良ではない、雨漏り原因が自然災害だった場合には保証はききません。築10年以内なら必ず無償修理が可能、というわけではありませんので注意しましょう。
施工不良でなかった場合も、まだ諦めないで!
残念ながら雨漏り原因が施工不良でなかった場合は、こういった瑕疵保証は適用されません。
ですが、まだ諦めないでください!もしもあなたが
- 火災保険に加入しており
- 雨漏り原因が台風など自然災害によるものだった
と認定されれば、火災保険の適用ができるかも知れません。
火災保険といえば、火事の際に使う保険だと思われがち。ですが、じつは『風災』や『雪災』などの自然災害にもあてはまるんです。
詳しくはこちらにまとめていますので、参考にしてみてください!

放置は絶対にNG!
「瑕疵保証も使えないし、火災保険にも入ってない(適用できない)…もう、放置しようかな」
↑このような判断は、当然ながら絶対にNGです。雨漏りは虫歯と同じ。予防はできても、一度なってしまったら自然治癒はしません。
確実に被害は進みますし、酷くなればなるほど、修理にも費用&時間がかかるようになります(ここも虫歯と同じですね)。
ですから、保証や火災保険が使えない場合でも、そのまま放置する…という選択肢は絶対に選ばないようにしましょう。

片流れ屋根の住宅は雨漏りしやすいのか?:まとめ

雨漏りしやすいと言いつつ『片流れ屋根は構造的に雨漏りに強い!』といった情報からスタートした今回の記事。
不思議に思った方も多いかもしれませんが、最後までお読みいただいけたことで、意味が分かったのではないでしょうか。
最後に、ここまでの情報をまとめますね。
片流れ屋根の”構造自体は”雨漏りに強い!
でも、片流れ屋根の”家屋は”雨漏りに弱い…!
- 屋根の弱点である継ぎ目が雨水に晒されやすい
- 家屋自体の劣化速度を早めてしまう
片流れ屋根の雨漏りリスクを抑えるために…
- 定期的なチェックとメンテナンス
- 弱点部分への防水施工
もしも、すでに雨漏りしていたら…
築10年以内なら、保証が適用される可能性あり。
瑕疵保証が無理でも、自然災害による雨漏りの場合は火災保険が適用されるかも。
一度発生した雨漏りは、自然に直ることはありません…。
雨漏りしやすいというのは、確かに大きなデメリットです。でも、それと同じぐらい大きなメリットもあります。
そもそも、どんな住宅にもメリット・デメリットはあるものです。大事なのは『デメリットを知って、どう予防し、対処するか?』ではないでしょうか。
この記事の情報を使って、しっかり雨漏り対処をし、安心な暮らしを送ってくださいね!
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