「家屋を雨漏りから守るために重要な仕組みはどこでしょう?」
…と聞かれたら、おそらく大部分の方が『屋根』と答えるのではないでしょうか?ここで『雨仕舞』と答えた人がいたら、それはほぼ間違いなく『専門家』の類いです(笑)。
ところが…雨仕舞が施されていない家屋は”ほぼ存在しない”と言えるほど、あらゆる人に関わりのある箇所なんですよね。
家屋を雨漏り被害から守るため非常に重要な役割を担っている雨仕舞。家屋の『どの部分』を指し、どのようなことに気をかけて、どのようなメンテナンスを施すか…これを知っているかいないかで、家屋の持ち度合いは大きく変わります。
この記事では、そんな知られざる雨仕舞の仕組みや箇所、メンテナンスについて情報をまとめてみました。数分で読めるボリュームの内容ですので、大切な家屋を雨漏り被害から守るためにも、ぜひ読んでみてくださいね。
雨仕舞とは?
じつは、雨仕舞とは、1つの箇所や部品を指していう名称ではありません。簡単に言えば『家の中に雨水を浸入させないための仕組み』のことを指します。
たとえば、だいたいの屋根についている『勾配(傾き)』…じつは、これも『屋根に施す雨仕舞の一種』なんですよ。
屋根の勾配があるから雨水は滞留することなく流れていきます。流れた雨水は軒先から雨樋を通って排水されていきますよね。このように雨水を適切に排水する仕組みが雨仕舞と呼ばれるものです。
雨水が家屋に溜まる、当たるというのは雨漏りの大きな原因でありリスク。逆に言えば、雨水が溜まらない、または当たらなければ、雨漏りのリスクは大きく下げられるというわけです。
この『雨水の滞留を防ぐ役割』を担っているのが『雨仕舞』という仕組みなんですね。
雨仕舞は家屋の様々な箇所で施工されている
ですから、雨仕舞は屋根だけでなく、家屋のあらゆる場所に仕組みとして施されているのです。その仕組みは、もちろん勾配だけではありません。
より具体的に、家屋の重要な箇所ごとにご説明しますね。
- 屋根
- 外壁
- バルコニー
ポイント1.屋根
屋根で言うと、先程の勾配もそうですが…勾配含め
- 勾配
- 棟
- 谷樋
- 屋根と外壁の取り合い部分
の4点が代表的です!
屋根の勾配
先ほども説明しましたが、雨水が屋根に滞留しないように施す『傾き』ですね(流れた雨水を排水するための軒先〜雨樋を通して雨仕舞と呼ぶケースもあります)
屋根の棟
棟とは屋根面同士が重なり合う箇所のこと。 「屋根の絵を描いてください」と言われると大体の人が描きそうな”シンプルな三角屋根(切妻屋根と言います)”の重なり合う部分がまさに代表的な事例ですね。
非常に雨漏りリスクの高い箇所で、屋根で起こる雨漏りの6~7割が棟が原因とも言われているほどなんです。
ここに棟板金と呼ばれる板金を設置し、雨水を当てないように工夫がされているんですね。
リンク:屋根の雨漏りで最も注意すべき”棟”を徹底解説【原因から対策まで】
谷樋
軒のように、屋根面が重なり合う箇所という意味では一緒です。ただし軒は山状になっている箇所で、谷樋はその名のとおり谷状になっている箇所のことですね。
谷になっていることにより、雨水が集中して流れやすくなっています。結果、その分雨漏りリスクが高いんですよ。
この谷樋にも谷樋板金が設置され、雨水が適切に排水されるようになっているんですね。
屋根と外壁の取り合い部分
取り合いとは、違う部材同士の結合部分のこと、つまり屋根と外壁の結合部分ですね。
この取り合いは隙間が非常にできやすい箇所で、さらに外壁を伝ってきた雨水が流れやすいため、雨漏りリスクが高いんです。
そのため、この取り合いにも雨水が直接当たらないように、板金が設置されています!
ポイント2.外壁
外壁の雨仕舞は以下のとおり。
- 庇(ひさし)
- 窓(の周辺コーキング)
庇(ひさし)
庇は窓や玄関の上部に取り付けられている、雨よけ部分のこと。外壁もそうですが、意外なことに窓も雨漏り原因となりやすい箇所なんですよ。
この庇があることによって外壁や窓に雨を直接当てないようにしており、雨漏りのリスクを軽減しているんですね。
また、庇と外壁の接合部分も雨水が浸入しやすいため、板金が施工されています。
窓(の周辺)コーキング
コーキングとは、部材同士の隙間を埋める、ゴム状の柔らかい素材のこと。
先ほども言ったとおり、窓は雨漏りリスクの高い箇所。というのも、そもそも窓は外壁に穴を開けて設置しているような物なので、その分隙間が非常にできやすいんですよ。
この隙間は非常に雨漏りリスクの高い箇所のため、コーキングを施工することにより、雨水の浸入を防いでいるんですね。
ポイント3.バルコニー
あまりイメージがないかもしれませんが、バルコニーもじつは雨漏りが起きやすい箇所。雨仕舞が施工されているのは主に以下の2カ所です。
- 笠木
- 床の立ち上がり部分
笠木
笠木とはバルコニーから人が落ちないように設置した手すり壁の、その最上部にかぶせる仕上げ材のこと。
イメージが湧かないかもしれませんが、じつはこの手すりからも雨漏りが起きるんですね。
それを防ぐために笠木でカバーし、雨水の浸入を防いでいます。
床の立ち上がり部分
屋根と外壁の取り合い部分と同じく、床と壁部分の結合部分となります。
この結合部分は雨漏りリスクが高く、板金が施工されていることが多い箇所になります!
雨仕舞におけるトラブル原因
雨仕舞の仕組みと重要性は理解いただけたかと思います。もしも、そんな重要な雨仕舞自体にトラブルがあれば…当然ながら、雨漏りリスクは一気に激増してしまいますよね。
雨漏りを未然に防ぐには、『雨仕舞トラブル』を事前にしっかり認識し、対処していく必要があります。
よく見られる雨仕舞のトラブルは主に以下の3つ!
- 経年劣化
- 自然災害による破損
- 施工不良
経年劣化
雨仕舞で主に使用されている板金やコーキングには耐用年数、つまり寿命があります。
目安ですが、耐用年数は以下のとおり。
- 板金→20年~30年
- コーキング→10年~15年
板金は一般的なガルバリウムで想定していますが、素材によってはこれよりも短いことも。
板金であれば素材自体に穴が空いたり、固定している釘が浮いてきて、その隙間から雨水が浸入することも。また、コーキングの場合は劣化によってひび割れが発生するので、そこから雨水が浸入してしまうんですね。
自然災害による破損
台風の強風など、いわゆる『自然災害』で板金に被害が及ぶケース。
棟板金は特に風の影響を受けやすいため、台風後は板金が浮いたりずれたり、ひどい場合は剥がれてしまうことも。
そうなると棟の下地が剥き出しとなるので、雨漏りに繋がってしまうのは容易に想像できるでしょう。
また、自然災害は台風だけではありません。寒い地域では雪が溶けてできたつららが堤防となり、水をせき止めて雨漏りの原因となる、すがもりという被害もあるんですよ。
こういった自然災害が原因となって、雨仕舞にトラブルが起きてしまうんですね。
施工不良
残念な話ですが、施工不良によって雨仕舞にトラブルが起きることも…。
そもそも雨仕舞は、雨を適切に排水する仕組み。つまりは雨がどういう風に流れるか、を理解している必要があるんですが…業者によっては知見が足りず、雨仕舞が適切に施工されていないということもあるんですね。
たとえばコーキングの施工や板金の取り付けが甘くて、最初から雨が入り込む隙間ができていたり。
また、屋根材には雨水を排水するために、あえて隙間を開けておく必要があるんですが…その隙間をコーキングで埋めてしまうということもあるんですね。そうなると屋根材の内側に入り込んだ雨水が排水されずに滞留してしまい、雨漏りに繋がってしまうんですよ。
雨漏りを未然に防ぐには雨仕舞の定期的なチェックが重要!
雨漏りを防ぐうえで非常に重要な雨仕舞。雨漏りが起きる原因には、雨仕舞のトラブルが大きく関わっています。これは言い換えると『雨仕舞にトラブルが起きなければ雨漏りのリスクは大幅に軽減される』ということが言えるでしょう。
そのためには、雨仕舞を定期的にチェックし、トラブルを早期に発見することが重要です。
業者にチェックをしてもらえればより確実ですが、簡単な目視でのチェックならばご自身で行うことも可能!ということで、雨仕舞の重要箇所それぞれについて、簡単にご説明しますね。
屋根の雨仕舞トラブルチェック
屋根における主な雨仕舞は棟や谷樋、取り合いに施工されている板金です。
板金のトラブルチェックとしては、以下のポイントをチェックしておきましょう。
- 板金の釘が浮いていないか?
- 板金が浮いていたり剥がれていないか?
- サビが発生していないか?
特に台風など強風後は要注意!
棟板金においては場所的にも風の影響を受けやすく、剥がれてしまうことも。ですので、台風が去った後は庭に釘や板金が落ちていないか確認しておきましょう。
もし落ちていたとしたら、板金にトラブルがあるということですから。
※ただし、屋根に登るのは落下の危険性が高いので、2階の窓から、または双眼鏡等で安全な場所からチェックしましょう。
外壁の雨仕舞トラブルチェック
外壁の雨仕舞は庇の板金、コーキングですね。
板金に関しては屋根と同様に、
- 板金の釘が浮いていないか?
- 板金が浮いていたり剥がれていないか?
- サビが発生していないか?
コーキングに関しては
- ひび割れがないか?
- 剥がれていないか?
以上のことを重点的にチェックしておきましょう。
バルコニーの雨仕舞トラブルチェック
バルコニーの雨仕舞は笠木、床の立ち上がりですね。
笠木に関しては
- 笠木の釘が浮いていないか?
- 笠木そのものが浮いていないか
- 笠木のコーキングにひび割れや剥がれがないか?
床の立ち上がりの板金に関しても他と同じように、浮いたり剥がれがないかチェックしておきましょう。
また、排水溝に関しても雨水を排水する為の雨仕舞。ここにゴミが詰まると、雨水が滞留して雨漏りリスクが高まってしまうので、掃除をしておくといいでしょう。
もしも雨仕舞にトラブルを発見したら?
どんな些細なことでも、トラブルを発見したら早急に対処する必要があります。
もちろん、トラブル=すぐに雨漏り…というわけではありません。ですが、家屋トラブルは『放っておけばそのうち直る』ということはなく、確実に少しずつ被害が進行していきます。
つまり、あなたの知らないうちに雨漏りまで進行するかも…ということ。そんなことにならないために、以下のとおり対処していきましょう。
- まずは応急処置
- 修理業者に連絡
対処1.まずは応急処置
まずはとにかく『トラブル箇所に雨水を当てない』状態を作るようにすることが重要です。
自身でできる応急処置としては、以下のことが効果的。
- ブルーシートを被せる
- 防水テープを貼る
どちらもホームセンターで安価に手に入ります。
シンプルながらも効果的で、いざ『本格的に修理』となった際にも簡単に撤去可能なので、ぜひお試しください。
対処2.“雨漏り”修理業者に連絡
応急処置はあくまでも一時的なもの。効果がずっと続くわけではありませんので、業者に連絡して、メンテナンスをしてもらいましょう。
ただし、ここで注意なのがその業者が『雨漏りに精通しているかどうか?』です。
しつこいようですが、雨仕舞は雨を適切に排水する仕組み。つまり雨仕舞を施工・メンテナンスするためには雨水の流れなど、熟知している必要があるんです。
雨漏りに精通している専門業者であれば、雨仕舞に関してももちろん熟知しています。
だからこそ、雨漏りに精通した修理業者に依頼をするのがベストな対応というわけですね。
雨仕舞のトラブルには火災保険が使えるかも
知らない方もいるかもしれませんが、雨漏りトラブルには火災保険が使える場合もあります。
というのも火災保険に含まれる『風災』には台風が含まれます。つまり、台風の影響で家屋にトラブルが発生した場合は火災保険が適用できるかもしれないんですよ。
特に雨仕舞における棟板金は風の影響を受けやすい箇所なので、台風での破損は珍しくありません。
ただし、破損が経年劣化によるものと判断された場合は使えませんし、そもそも契約内容に風災が含まれていないという可能性もあります。
一度、火災保険の契約内容は確認しておくと、いざという時に安心ですね!
雨漏りを防ぎたいなら知っておくべき雨仕舞について解説!:まとめ
少し長くなってしまったので、今回の内容をまとめていきますね。
雨漏りに繋がってしまう雨仕舞のトラブルは…⬇︎
- 経年劣化
- 自然災害による破損
- 施工不良
雨漏りを未然に防ぐためにやっておきたい雨仕舞チェックは…⬇︎
- 板金が浮いたり剥がれたりしていないか?
- 板金の釘が浮いていないか?
- 板金にサビが発生していないか?
- コーキングにひび割れや剥がれがないか?
- バルコニーの排水溝にゴミが溜まっていないか?
雨仕舞にトラブルがあったら…⬇︎
- まずはブルーシートや防水テープで応急処置
- “雨漏り”に精通した業者に連絡してメンテナンス
あまり知られていませんが、雨仕舞は雨漏りを防ぐためになくてはならない重要な仕組みです。
大げさですが、雨仕舞を制する者は雨漏りを制す。と言っても過言ではありません。
わずかなトラブルも放置せずに、必ず早急に対処するようにしてくださいね。