モルタル外壁のひび割れは“即”雨漏り?【緊急度チェックつき】

この記事で分かるポイント!
  • モルタル外壁の特徴
  • モルタル外壁がひび割れしやすい理由
  • モルタル外壁の雨漏り予防法

築年数が経ってくると、家屋には様々な劣化が見られるようになります。汚れや日焼け、またはなんらかの原因によってできた傷など様々ですが…。

特に家屋トラブルに繋がりやすいポイントの1つが『外壁のひび割れ』。

ひび割れは自体は残念ながらどのような外壁材でも起こりうることなんですが…特に『ひび割れ症状が出やすい外壁』がモルタル外壁と呼ばれるものです。

1980年代あたりまで外壁の主流でもあったモルタル外壁。じつは、その耐久性は20〜30年ほどと言われています。ということは…そう、すでに『外壁の耐久性に限界が来ている家屋』がたくさんあるということですよね(汗)。

そこで、雨漏り対応の専門家としての目線で、モルタル外壁についてまとめてみました。

数分で読める内容となっていますので、あなたのお住いが築20〜30年以上経っているようであれば、ぜひ一読してみてください。

目次

モルタル外壁の特徴

モルタルとは

  • セメント

練り合わせて作る『モルタル材』という素材を使った外壁です。最初に少しお話しましたように、1980年代までは『家屋 = モルタル外壁』というくらい、主流で使われていた素材になります。

モルタル外壁のメリット

そんなモルタル外壁のメリットは、大きく次の2つ。

3大メリット
  1. デザインの自由度が高い
  2. 耐火性に優れている
  3. メンテナンス頻度は少なくて済む

デザインの自由度が高い

モルタル外壁は職人さんが直接手作業で塗って仕上げるタイプの外壁です。

最初から決まった形があるものでも無いので(職人さんの腕前に依存はしますが)比較的自由にデザインをいじることができるという特徴があります。

じつは(最近は採用されるケースも減ってきましたが)デザイン性の高い設計にも対応できる、優れた外壁なんですよ。

耐火性に優れている

モルタルは、建築基準法にて正式に『不燃材料』として認められている素材です。

セメントや砂といった素材が元となっているので、ようは『燃えにくい』ということですね。

もともと木造家屋が多く、震災などによる火災被害が大きくなる傾向にあった日本家屋の救世主として脚光を浴びた外壁ですから、とても優れた耐火性を持っています。

モルタル外壁のデメリット

かなり大きなメリットがあるモルタル外壁ですが、やはりデメリットもあります。

3大デメリット
  1. 比較的、コストが高い
  2. 工期が長め
  3. 雨漏りに弱い

比較的、コストが高い

近年でモルタル外壁を採用する家屋が少なくなった一番の原因はここにあるかも知れません。

モルタル外壁は、職人が手作業で作り上げるタイプの外壁なので、近年主流になってるサイディング外壁と比べてコストが高くなってしまいます。

工期が長め

モルタル外壁は何度もお話しているように『職人さんが手作業で作り上げるタイプの外壁』。

作業量が多くなるぶん、完成までにかかる時間もそれに応じて長くなってしまいます。結果として、完成までの工期が長くなってしまうというデメリットがあるんですね。

雨漏りに弱い

もちろん、私たちがもっともお伝えしたいデメリットはここです(笑)。

なぜ、モルタル外壁は雨漏りに弱いのか…それは、サイディング外壁と比べて、非常に『ヒビが入りやすい』という特徴があるから。

ひび割れが発生するということは、そのまま『雨水の通り道を作ってしまう』のと同じ。モルタル外壁を採用している家屋で壁からの雨漏り被害が発生した場合、このひび割れが原因となっているケースが圧倒的に多くなります。

モルタル外壁がひび割れしやすい5つの理由

どのような材質の外壁であっても、100%ひび割れが発生しない外壁はありません。ですが、やはりモルタル外壁は他材質に比べてひび割れが起こりやすい傾向にあります。

その理由として、以下の5つが挙げられます。

モルタル外壁が雨漏りしやすい5大理由
  1. 自然乾燥
  2. 経年劣化による塗装剥がれ
  3. 地震被害
  4. 寒暖差による膨張・収縮
  5. 施工不良

理由1.モルタル外壁の自然乾燥

モルタルはセメント砂を水で煉り合せたもの。それを職人さんが塗って仕上げるんですが、じつは完成した直後って乾燥しきっていないんです。

時間の経過と共に自然に乾燥していくんですが、2~3年を目安にその乾燥によってひび割れが発生してきます。

ただ、このひび割れに関しては『外壁の乾燥が終わり状態が整った』ということ。あくまでモルタル外壁の仕様と言えます。

ですが、ひび割れであることには変わりなく..実際、自然乾燥によるひび割れでの雨漏りは普通に起きてしまうんですよね(汗)。

(少し書いたように、近年ではモルタル外壁を採用する家屋は少なくなっています。築年数の経過した家屋で『自然乾燥によるひび割れが発生』というケースはまず無いので、あまり該当することがない原因とも言えます

理由2.経年劣化による塗装剥がれ

外壁は外にあるものですから、1年中日光や雨に晒され続けています。これによって経年劣化が進み、外壁表面の塗装が剥がれてきてしまいます。

じつは、モルタル素材は、素材そのものに防水性がまったくありません。ですから、塗装が剥がれてしまうと簡単に水を吸収してしまうという欠点があるんですよ。

塗装が剥がれてしまったモルタル外壁は、水分を吸収(膨張)→乾燥(伸縮)といった動作を繰り返すことになります。この膨張→収縮の繰り返しによる負荷でひび割れが起きてしまいます。

理由3.地震

ひび割れしやすいモルタルは比較的圧力に強い素材です。ですから、耐久性という意味で言えば、むしろ強い素材なのですが…地震の場合、その耐久性がアダとなってひび割れすることが多いんです。

というのも、木造建築が中心である日本家屋は、建物自体が比較的『変形しやすい』という特徴があります。

その結果、地震が発生した際、柔軟に変形する家屋よりも硬く変形し難いモルタル外壁に大きな力が集中してしまうんですよ。

また、従来の日本家屋は屋根素材に瓦などの重みがある素材を使っている家屋も多く、地震による揺れが大きくなりやすい傾向があります。

これらの相乗効果によって、モルタル外壁(を採用している家屋)は、地震によって外壁にヒビが入ってしまう被害が起きやすいんですね。

理由4.寒暖差による膨張・収縮

モルタルには熱伸縮(気温が高い時に膨張し、寒い時に収縮する特性)が発生しやすい素材です。

寒暖差が激しいほど熱伸縮による影響は大きくなりますが、日本は季節による寒暖差が激しいので、熱伸縮による影響を受けやすいんですよ。

理由2でも少しお話したように、膨張→伸縮の繰り返しは外壁にとって大きな負荷となり、ひび割れに繋がってしまいます。

理由5.施工不良

モルタルは職人さんが直接仕上げてくれます。

ということは仕上がりは『職人さんの腕次第』。つまりは経験の浅い職人さんだとしたら技術不足によって仕上がりが不十分になることも考えられるんですね。

その場合は短期間でひび割れは起きてしまうことも…。

また、極端な話ですが職人さんのうっかりミスや手抜きなどが発生することもゼロではありません。人間が直接手作業をするので、どうしてもないとは言い切れないんですよね。

モルタル外壁のひび割れ緊急度判定

外壁のヒビは、間違いなく雨漏りの原因に直結します…が、ひび割れが発生→即雨漏り、というわけでもありません。

外壁のひび割れは、症状によって緊急度が変わります。

ひび割れ緊急度チェック
  • ヘアクラック:緊急度低め
  • 構造クラック:緊急度高め
  • 開口クラック:緊急度高め〜最高

クラックとは、ひび割れのことを指します。

ヘアクラック

ヘアクラックとは、その名の通り『極小のひび割れ(ヘア = 髪の毛ほどの、という意味)』。

判断基準としては、ひび割れの幅が0.3mm以下、ヒビの深さが4mm以下に該当するひび割れをヘアクラックとして判断します。

この場合、モルタル表面の塗装部分のみにヒビが入っているような状態であり、内部のモルタルや建物自体にダメージをうけてひび割れしたわけではありません。そのぶん、被害としても小さく、緊急度も低めです。

ですが、先に少しご説明したように、モルタル自体にそもそも防水性能がなく、表面の塗装が防水の要。その要にヒビが入っているわけですから、ずっと放置してよいか?と言われるとそういうわけでもありません(汗)。

あくまで『今すぐに対処しないと大変なことになる』というレベルではない、という認識でお願いします。

構造クラック:緊急度高め

判断基準として、幅0.4mm以上、深さ5mm以上。ヘアクラックを超えた状態が該当します。

ヘアクラックと構造クラックを見分けるための簡単なイメージが『ヒビの隙間に名刺が入るかどうか』。名刺が入っていくくらいの隙間が空いていたら、構造クラック・開口クラックだと思いましょう。

この段階になると、表面の塗装だけでなく、モルタル自体にひびが入っている状態です。

ここまで来ると雨水がモルタ自体にどんどん吸収されてしまう可能性が高く、緊急度が高い、すぐに対処をする必要がある状態だと考えましょう。

開口クラック:緊急度高め〜最高

基本的には構造クラックと同じなんですが、窓や扉などの開口部付近に起きた構造クラックのことを『開口クラック』といいます。

こういった開口部は、他の箇所よりも耐久性が低くひび割れが起こりやすいんですが…特に窓部分はより注意が必要です。

窓などの開口部は外壁から20㎜程度飛び出しているため、雨が降った場合は必ず雨の通り道となってしまう箇所。ここに大きなひび割れが発生しているということは…いうまでもなく、雨水の侵入リスクが極めて高いということ。

なので開口クラックは『特に雨漏りリスクが高く、緊急度が高い』状態となります。

構造クラック・開口クラックは耐久性にもリスクがある

構造クラック・開口クラックまで来ると、塗装だけでなく中のモルタルにまでヒビが入っている状態なので、より多くの雨水がモルタルへと吸収されることになりますよね。

じつは、モルタル外壁は、『ラス網』という金網を下地として使っているのですが…モルタル自体に多くの水分が吸収されてしまうと、このラス網が錆びてしまうんですよ(汗)。

金属はサビが発生すると、一気に耐久性が下がってしまいます。

ここまで来ると雨漏り被害だけでなく建物自体に大きな影響を与えかねないので、一刻も早く対処を考えたいところです。

モルタル外壁のひび割れ対策!

モルタル外壁とひび割れの関係性はご理解いただけたかと思います。

先程ご説明したように、ヘアクラックの段階では緊急性は低く、ご自身でできる対処方法でも効果を見込むことができます。

ですから、モルタル外壁からの雨漏りを抑制するには、定期的にチェックを行い、被害が大きくなる前に(ヘアクラック段階のうちに)対処を取っておくことが大切になってきます。

定期的なセルフチェック&メンテナンス

基本的に外壁のヒビは『目視できるもの』なので、ある程度ご自身のセルフチェックと応急処置でも予防が可能。普段から定期的に目視でのセルフチェックを行い、ヒビがないか確認しましょう。

もしひびがあった場合、ヘアクラック程度の軽いものであれば防水スプレーをヒビを中心に吹きかけておきましょう。

じつは、これだけでかなり効果が見込めます(もともとヒビが小さく、雨水の侵入領域自体が小さいため)。

また、セルフチェックの際、ヒビの有無に合わせて以下の内容を確認しておくと、なお良いでしょう。

チェックしておきたいポイント
  • 水を吸水するか?
  • チョーキングはあるか?
  • 苔やカビがないか?
  • 塗装の剥がれがないか?

水を吸水するか?

霧吹きやホースなど、なんでもいいので外壁に水をかけてみてください。水を弾くのであれば問題ないんですが、弾かずに吸水してしまった場合は塗装が劣化している証拠です。

そのまま放っておけばひび割れを起こしてしまう恐れがあるので注意しましょう。

特に日当たりのいい部分は日光によって劣化しやすいので、念入りに見てみてください。

チョーキングはあるか?

外壁を手で触って、壁と同じ色が付くことをチョーキング現象と言います。

この現象が発生している場合、表面の塗装が劣化し、防水効果が落ちてしまっている証拠。

ここまで来ると防水スプレーなどの一時的な対応だけで防水性を取り戻すのは難しく、塗装によるメンテナンスを検討する必要が出てきます。

苔やカビがないか?

苔やカビは湿った場所が大好物。

つまり、苔やカビが発生しているということは…その部分は防水効果が落ちて、吸水してしまっているということ。

外壁に苔やカビが多く発生している場合は、業者にお願いして専門的にチェックしてもらうことを検討する必要があります。

塗装の剥がれがないか?

塗装の膜は、特に外的要因による破損が無かったとしても、経年劣化により徐々に剥がれてしまうもの。

もし塗装が剥がれている箇所があれば、そこはすでに防水性能がなくなっている部分。極端な話、超大きなヒビが発生しているのと同じです(汗)。

これを放置することは非常に大きなリスクにつながるので、再塗装による補修を検討する必要があります。

ヘアクラック以上の問題が見つかった場合は…

ここまで来たら、残念ですが『素直に専門業者に相談する』という行為をとりましょう(汗)。

ヘアクラック程度であればご自身で応急対応が可能ですが、構造クラック・開口クラック・チョーキングや塗装剥がれなどはご自身で対応するのは基本的に不可能です。

この状態を放置すればするほど、家屋そのものの大きなダメージに繋がっていき、いざ修理を…と考えた時に思いがけない高額費用になってしまうことも起こり得ます。

身体の怪我と違い、家屋の損害は『時間が経てば自然と治る』ということは絶対になく、時間が経てば確実により悪化します。

家屋トラブルは、迅速に対応!これは、大切な家屋を長持ちさせるための必須事項です。

壁からの雨漏りは気づきにくいので注意!

普通「雨漏りしている!」と気づくのは、家屋内に水が染み込んでからだと思います。

ですが、雨漏りは発生してもすぐには室内にまで染み出すとは限りません。特に外壁からの雨漏りは、すぐに雨水が室内まで染み込んでこないケースが多くなります。

ということは…雨漏りに気づいた(室内に雨水が染み出して来たことを確認できた)タイミングでは、すでに長い間雨水が家屋に侵入し続けていた状態かも知れない、ということ(汗)。

ですから、壁からの雨漏りに気づいた場合、特に『放置厳禁』だと思ってください(そもそも、雨漏りは放置厳禁ですが…)!

モルタル外壁のひび割れは“即”雨漏り?:まとめ

少々長くなりましたので、最後に今回の内容をまとめますね。

モルタル外壁は雨漏りに弱い…その主な要因は『ひび割れしやすい』特性にある。

モルタル外壁はひび割れしやすい理由は…⬇︎

ひび割れしやすい理由
  1. 自然乾燥
  2. 経年劣化による塗装剥がれ
  3. 地震被害
  4. 寒暖差による膨張・収縮
  5. 施工不良

モルタル外壁のひび割れは、度合いによって緊急度が異なる。

幅0.3mm以下、深さ4mm以下のひび割れ→緊急度は低め。

幅0.4mm以上、深さ5mm以上のひび割れ→緊急度高め!

緊急度の低いひび割れなら、ある程度ご自身でも対応可能。

モルタル外壁の雨漏りは定期的なメンテナンスが大事。チェックすべきポイントは…

セルフチェックポイント
  • ひび割れがあるか?
  • 水を吸水するか?
  • チョーキングはあるか?
  • 苔やカビがないか?
  • 塗装の剥がれはないか?

最初にお話したように、1980年代の家屋は『外壁 = モルタル外壁』と言えるくらい、一般的に採用されていた外壁です。

現在で築20〜30年ほど経過している家屋であれば、その多くがモルタル外壁を採用しているでしょう。

そうなると、すでに相当な経年劣化や破損、塗装剥がれが発生しているはず…この記事で得た知識をもとに、ぜひしっかりとしたチェックとメンテナンスを行い、雨漏りの心配のない生活を送ってくださいね。

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