屋根の種類ごとに雨漏りリスクをまとめます【専門家の解説付き】

この記事で分かるポイント!
  • 屋根種類ごと雨漏りリスク
  • 雨漏りに強い屋根、弱い屋根
  • 屋根からの雨漏りリスクを下げる方法

住宅に欠かすことのできないパーツの1つ『屋根』。

昔ながらの屋根もあれば、モダンで特徴的な今風の屋根まで。様々な種類の屋根がありますが、じつは種類によって見た目だけではなく『雨漏りのリスク』も大きく変わってきます。

この記事には、屋根それぞれの

  • 特性
  • 雨漏りリスクの大小
  • 雨漏りリスクを下げる方法

を、雨漏り専門家の目線でまとめておきました。

ぜひ、この記事を活用して『あなたのご自宅の屋根トラブル』に備えてください!

目次

雨漏りリスクが高い屋根に共通する3大特徴

屋根にはたくさんの種類がありますが、その中でも『雨漏りリスクが高い屋根』には以下の3つの特徴があります。

雨漏りしやすい屋根の特徴
  1. 屋根の構造が複雑
  2. 屋根の勾配がゆるい
  3. 屋根の軒が短い

特徴1.屋根の構造が複雑

構造が複雑な屋根ほど、基本的に『雨漏りに弱い屋根』と言えます。

屋根からの雨漏りを調査すると、実際に雨水が漏れ出しているのは圧倒的に『屋根の繋ぎ目』が多いんです。そして、構造が複雑な屋根ほど『繋ぎ目部分が多い』特徴があります。

ようは、構造が複雑な屋根は『屋根としての弱点だらけ』という状態なんです。

逆に、屋根の構造がシンプルであるほど、その繋ぎ目は少なくなりますから、それに合わせて雨漏りのリスクも小さくなっていきます。

特徴2.屋根の勾配が緩い

勾配は、屋根にとって非常に重要なポイントです。屋根の勾配は、そのまま屋根の『排水力』に繋がります。

屋根に雨水が滞留してしまうと、屋根はどんどん劣化してしまいます。屋根の劣化はそのままヒビなどの屋根破損に繋がり、結果として『雨の通り道』となってしまうんです。

特に『勾配がない』屋根などは非常にリスクが高いといえるでしょう。逆に、しっかりと勾配のあるタイプの屋根であれば、雨漏りリスクは軽減されます。

滞留ポイントが『繋ぎ目』だったら更に危険!

特徴1で紹介したように、屋根の繋ぎ目はただでさえ『屋根の弱点』。ここが雨水の滞留ポイントになってしまうと…。

言うまでもなく、雨漏りリスクは一気に高くなってしまいます。ただでさえ雨漏りに弱い繋ぎ目が、雨水の滞留でさらに劣化し、より一層雨漏りに弱いポイントに変わってしまいます。

総じて『勾配が緩い』屋根は、雨漏りリスクが高い屋根といえますね。 

特徴3. 軒が短い

軒が短い屋根を採用している家屋は、屋根『以外』のところから雨漏りするリスクが高くなるんです。

軒とは屋根の先端部分。この部分は、家屋全体を守る『傘』のような役割を持ちます。

外壁面から飛び出している軒の長さが長いほど、家屋を雨や日差しから守ってくれます。逆にこの軒が短いほど、外壁は雨風に晒されやすくなり、その分劣化も激しくなってしまいます。

極端な話、軒がない住宅はもはや傘を差さずに雨の中で立っているようなもの…。雨風や日光に晒され続ける家屋の劣化速度は、軒が長い家屋に比べて圧倒的に早くなります。

この『家屋の劣化』により、壁や窓から雨漏りしてしまう、というわけですね。

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屋根別に解説する雨漏りリスク

ここまでで、いわゆる『雨漏りに弱い屋根』の特徴はご理解いただけたかと思います。

では、その特徴を踏まえて、屋根の種類ごとに雨漏りリスクを解説していきますね。

屋根種類ごとの解説
  1. 切妻屋根
  2. 寄棟屋根(方形屋根)
  3. 片流れ屋根
  4. 陸屋根
  5. 入母屋屋根
  6. 招き屋根
  7. はかま腰屋根

屋根その1.切妻屋根

切妻屋根とは、大棟(頂上部)が一直線で、そこから下へ2枚の屋根板が伸びた形状の屋根です。いわゆる『昔からの屋根といえば、これ!』というようなオーソドックスな三角屋根ですね。

屋根板は2枚のみというシンプルな構造。ということは…いわゆる『雨漏りに強い屋根』と言えるでしょう。

構造がシンプルな分、屋根のメンテナンス費用も比較的安価で済むというところもポイントですね。

屋根その2.寄棟屋根(方形屋根)

大棟(頂上部)から左右・前後に2面ずつ、計4枚の屋根板を組み合わせた屋根。

方形屋根は頂上部が直線ではなく、ピラミッドのような頂点になっています。それ以外は、寄棟屋根とほぼ同じものとなります。

この屋根の特徴は『積雪に強い』ということ。屋根の面が多面に分かれているぶん、それぞれの屋根にかかる負担が軽減されます。

この特徴により『雪が原因の雨漏り』に強い、といえるでしょう。

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また、寄棟屋根は屋根面が4面=4方向に軒が出ることになります。ということは…その分、外壁など屋根以外の箇所からの雨漏りリスクも軽減してくれるということですね!

屋根その3.片流れ屋根

屋根板が1面のみで、片側のみに傾斜が付いている屋根。モダンな見た目で最近増えてきている種類です。

いろんな屋根の中でも特にシンプルな構造で、雨漏りに強い形状といえますよね。

ですが…じつは『雨水が屋根の繋ぎ目に伝いやすい』というデメリットがあります。つまり、屋根の弱点が雨水に晒されやすいということ…。

しかも、片流れ屋根はそのデザインの特性上『軒がない』ケースも多く、この点も雨漏りリスク的観点で見ればかなりのマイナスポイント

じつは、総じて見ると『片流れ屋根は、残念ながら比較的雨漏りリスクが高い屋根』となるんです。 

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屋根その4.陸屋根

フラットな形状で、いわゆる『屋上』としても利用できるタイプの屋根。

こちらも最近採用されることが多いモダンでオシャレな屋根ですが…じつは、雨漏りリスク的観点でいうと『非常にリスクが大きい屋根』と言わざるを得ません。

一番の注意点は『基本的に、勾配がない』というところ。緩いどうこうの話ではなく『無い』んですよね(汗)。

そのため、どうしても雨水が滞留しやすく、劣化も激しくなるので、定期的なメンテナンスが欠かせません。

しかも、基本的に『軒も無い』という徹底ぶり…これにより、家屋全体が雨風に晒されやすく、屋根以外からの雨漏りリスクも高い傾向にあります。

総じて陸屋根は『非常に雨漏りリスクが高い屋根』と言えるでしょう…。

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屋根その5. 入母屋屋根

切妻屋根と寄棟屋根を合わせた構造で、昔ながらの純和風家屋によく見られるタイプです。

屋根の通気性はよく、湿度の高い日本の気候には適した屋根の1つです…が、じつは繋ぎ目が非常に多く複雑な構造をしています。

繋ぎ目が非常に多い=『雨漏りリスクが高い』という点に関してはすでにご存知でしょうが…じつは、もう1つ問題点があります。

それは『雨漏り箇所の診断が難しい屋根』という点(汗)。

屋根の繋ぎ目が多すぎるせいで、実際に雨漏り被害が発生した場合に『どの繋ぎ目が問題となっているのか』をチェックする手間が非常にかかるのです…。

日本の気候には優しい屋根かも知れませんが、雨漏りの専門家にはあまり優しく無い屋根と言えますね。

屋根その6.招き屋根(差し掛け屋根)

切妻屋根と片流れ屋根を合わせたような屋根。またの名を差し掛け屋根とも呼ばれています。 

2階部分は切妻屋根で、片側の屋根面を長く、急勾配に設計。

そして、1階部分の屋根に片流れ屋根のような一枚屋根を設置しています(住宅によって様々な作りがあるので、あくまでも一例です)。

段違いの屋根設計となっているため、耐風性に優れており、強度も強いのがメリットです。

しかし、屋根と外壁の繋ぎ目部分が多くなると言うデメリットがあります。

屋根その7. はかま腰屋根

ベースは切妻屋根で作られており、大棟の両端部分を少し切り取って屋根面を設けた形状の屋根。

隅切り屋根や半切妻屋根、またはドイツ屋根という別名も。 

シンプルさでは切妻屋根に一歩劣りますが、それでもかなりシンプルな構造であることが特徴。よって、比較的『雨漏りに強い屋根』と言えますね。

雨漏り専門家が選ぶ、雨漏りリスクが『高い』屋根トップ3!

ここまでで色々な屋根の特徴をご紹介しました。ここで、雨漏りの専門家が(勝手に)選ぶ『雨漏りリスクが高い屋根:トップ3』を発表します。

それは…こちらの3つ!

雨漏りリスクが高い屋根トップ3
  1. 入母屋屋根
  2. 陸屋根
  3. 片流れ屋根

まず入母屋屋根ですが…とにもかくにも構造が複雑で、継ぎ目部分が非常に多いことが大きなデメリットです。何度もお伝えしていますが、屋根にとって繋ぎ目は弱点そのもの。その弱点が大量に存在する入母屋屋根は、やはりリスクが高い屋根No.1かなと考えます。

陸屋根は逆に構造自体は比較的シンプルなのですが、勾配不足による雨水の滞留、基本的に軒がないデザイン、と屋根としても家屋としても雨漏りに弱くなる作りをしています。

片流れ屋根は、構造もシンプルで基本的に雨漏りに弱い作りではありません。が、片流れ屋根の特徴である『(屋根の)繋ぎ目に雨水が伝いやすい』というデメリットは、あまり楽観視できません。弱点が雨水に晒されやすい、ということですからね…。

という観点から、この3つの屋根は特に『雨漏りリスクが高い屋根』と言えるでしょう。

雨漏り専門家が選ぶ、雨漏りリスクが『低い』屋根トップ3!

では、逆に『雨漏りの専門家から見た、リスクの低い屋根トップ3』はどれなのか?

それは…次の3つ!

雨漏りリスクの低い屋根トップ3
  1. 切妻屋根
  2. はかま腰屋根
  3. 寄棟屋根(方形屋根)

昔ながらの切妻屋根は目立った欠点もなく、構造もシンプル。数ある屋根の中でもトップクラスに『雨漏り耐性に優れた屋根』と言えます!

2位は、はかま腰屋根。切妻屋根には劣りますが、やはりそのシンプルさがポイント。言い換えれば、それだけ『継ぎ目が多くなる』という要素は、雨漏りにとって致命的ということですね…。

3位は寄棟屋根。上位に比べて面が増えるぶん、弱点である繋ぎ目は増えてしまいます。が、軒でしっかりと家屋自体を保護している点、そして(地域限定ですが)いわゆる積雪による屋根被害にも強い、という特徴が強力ですね!

この3つの屋根は、まさに『雨漏りリスクが低い屋根』といっていいでしょう!

【油断厳禁】 雨漏りリスク”ゼロ”の屋根は存在しません

念のためお伝えしておきますが…ここで挙げたリスクの低い屋根であったとしても、まず『絶対に雨漏りしない屋根』ではありません(汗)。

現実としては、どのような屋根であっても雨漏りすることはあります。

どれだけ雨漏りに強い構造であろうと、漏れるときは漏れます。破損するときは破損します。しっかりと軒で守られていたとしても『劣化しない家屋』というものもありません。

ですから、大切なのは、やはり『定期的にチェックしてあげる』ことなんです。

たとえ雨漏りリスクが高い屋根であったとしても、定期的にチェックしてあげれば、大きな問題になる前に防げます。逆に、雨漏りリスクが低い屋根であっても、長期間チェックせずに放置すれば、やはり雨漏りするリスクはどんどん高まります!

屋根起因の雨漏りリスクを下げる方法

では、ここからは、屋根起因での雨漏りリスクを下げるためのチェック&対応方法をご紹介します。

雨漏りリスクが高い屋根を採用されている方も、リスクが低い屋根を採用されている方も…万が一に備え、ぜひ定期的にチェックしてくださいね!

ぜひやりたい3チェック
  1. 目視でのセルフチェック
  2. 排水管・排水溝の掃除
  3. 専門家による屋根のチェック/メンテナンス

    方法1. 目視でのセルフチェック

    すごく単純ですが、じつは何気にかなり効果的です。というのも、屋根が原因で雨漏りする場合、確実に『屋根にトラブルが発生している』状態ですよね。この屋根トラブルは、内容によっては目で見て分かるレベルのものも多く含まれているんです。

    例えば、わかりやすいのは『屋根の瓦が割れている(ヒビが入っている)』などですね。こういった状態が見て取れる場合、明らかに屋根にトラブルが発生していることが分かります。今は大丈夫であったとしても、すでにトラブルは起きているわけですから、いつ雨漏りに発展してしまってもおかしくありません。

    あわせて、屋根の弱点である『繋ぎ目』の部分も、チェックしてみるといいでしょう。

    屋根の繋ぎ目は、補強のために『雨仕舞』という形で板金補強されています。この板金が屋根の劣化などでずれてしまうと、目に見えて『板金が浮いている(屋根との間に隙間がある)』状態になってきます。この状態が確認されている場合、弱点がむき出しに近い状態になっていることが分かりますね。

    また、屋根付近の外壁もチェックして見てください。外壁の塗装が剥がれていたり、外壁にヒビが入っていたり…といったトラブルも、目で見ればすぐに分かります!

    もちろん、すべてのトラブルが目で見て分かるわけではありません。が、目で見て確認できるトラブルは、あなたが思っているよりも多いものです。定期的にチェックしてみることをオススメします。

    方法2.排水管・排水溝の掃除

    屋根からの排水がうまく作動しない場合、雨水の滞留に繋がります。先にも少しご説明したように、雨水の滞留は屋根(&家屋)にとってダメージでしかありません。

    定期的に排水管・排水溝をチェックし、ゴミなどで詰まっていないかをチェックしましょう。排水管や排水溝は、風で飛ばされたゴミなどで、想像以上に汚れているものです。

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    屋根に排水溝地味に見えてもかなり効果的な方法なので、ぜひやってみてくださいね。

    特に陸屋根は、排水溝が命綱!

    雨漏りリスクが高いと判断した『陸屋根』を採用されている方は、必ず定期的に排水管チェックを行いましょう。

    ただでさえ排水に不安の残る陸屋根で排水溝トラブルが発生したら…そのリスクが非常に高いのは、なんとなく分かりますよね(汗)。

    事実、排水溝トラブルに紐づく雨漏りの発生率は非常に高く、陸屋根が雨漏りした際、多くの原因は排水溝トラブルが元となっています。

    方法3. 専門家による屋根のチェック/メンテナンス

    これを高い頻度で行うのはお金もかかるので難しいですが…年に一度くらいは、専門家によるチェック(と、必要であればメンテナンス)を実施することをオススメします。

    というのも、そもそも屋根には『耐用年数』という考え方があり、極論『いつかは必ずトラブルが発生する』といっても過言じゃないんです。

    そして…トラブルが起きてから直すのと、トラブルが起きる前にメンテナンスをするのは、言うまでもなく『トラブルが起きてから』の方が時間もお金もかかります。雨漏りトラブルにまで繋がったら、内部に侵入した雨水被害にも対応しなくてはなりません。

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    「特に問題もないのに、お金をかけて調べるなんて!」と思うかも知れませんが…どんなものでも『予防』というのは、そういうものです(汗)。病気になったことが分かってから健康診断を受ける方はいませんよね。

    転ばぬ先の杖だと思って、定期的なチェック&メンテナンスをされると、より安心です(みなさんがしっかりと定期的なメンテナンスをされれば、私たち雨漏り専門家の出番は激減します(笑))!

    屋根の種類ごとに雨漏りリスクをまとめます:まとめ

    では、ここまでの内容をまとめます。

    雨漏りに弱い屋根の3大特徴
    1. 屋根の構造が複雑
    2. 屋根の勾配がゆるい
    3. 屋根の軒が短い

    特に雨漏りリスクが高い屋根トップ3は…

    1. 入母屋屋根
    2. 陸屋根
    3. 片流れ屋根

    逆に、雨漏りリスクが低い屋根トップ3は…

    1. 切妻屋根
    2. はかま腰屋根
    3. 寄棟屋根(方形屋根)

    最後にもう1度お伝えしておきますが、どんな屋根であっても『絶対に雨漏りしない屋根』というものはありません。

    結局、大切なのは日頃のチェックとメンテナンスです。

    定期的に行いたいリスク対策
    1. 目視でのセルフチェック
    2. 排水管・排水溝の掃除
    3. 専門家による屋根のチェック/メンテナンス

    ぜひ、この記事をこれからの暮らしに役立ててくださいね!

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