雨漏りする大きな原因に『家屋の経年劣化』があります。が、実際に『どの素材が、どれくらいの期間経つと劣化するのか』を大体でも把握している…という方はほとんどいないのではないでしょうか。
じつは、この『経年劣化』というのはなかなか厄介でして…使っている素材や材質はもちろん、家屋の構造や場所、環境などによっても結構前後してしまうんですよね(汗)。
ですから『完全に詳細なデータ』をお届けするのは正直かなり難しいのですが…私たちが雨漏りの専門家として収集/対応してきた事例を踏まえ、あなたに『経年劣化の目安』をお伝えします。
場所・部材別にまとめていますので、かなり見やすくもなっているかと!
今回の記事を読んでもらえれば、あなたの家屋が築何年ぐらいで1度チェックすべきか…が分かるはずです!
経年劣化による雨漏りが起きやすい4大箇所

経年劣化による雨漏りは、大きく分けて次の4大箇所から発生します。
- 屋根
- 外壁
- 窓
- バルコニー
これらの箇所が紫外線や雨風に晒されることで、経年劣化はどんどん進行します。
最初に少しお話しましたが、家屋は様々な部材で構成されており、耐用年数とメンテナンス時期がそれぞれ決まっています。ですから、各部位で使用される部材も異なるので、箇所によって経年劣化のベースが異なるんですね。
耐用年数とメンテナンス時期の違い
どちらも同じように捉えられがちですが、
- 耐用年数:その部材の『寿命』
- メンテナンス時期:耐用年数を適正に保つためにメンテナンスを行うことを推奨する経過年数
です。メンテナンス時期にて適切な対応を行うことで、各素材の寿命を最適化することができます。
(言い換えれば、ちゃんとメンテナンスを行なっていない場合…本来の目安となる耐用年数ほどの期待値を持てない可能性が高いわけですね(汗))。
各場所・部材別の耐用年数とメンテナンス時期

ではさっそく、4大箇所
- 屋根
- 外壁
- 窓
- バルコニー
における、部材別の耐用年数とメンテナンス時期を説明していきます!
屋根に使われる部材
屋根に使われる部材は、おもに次の7つ。
- スレート
- アスファルトシングル
- トタン
- ガルバリウム
- セメント瓦
- 日本瓦
- ルーフィング
スレート
- 耐用年数:15~20年
- メンテナンス時期:7~8年
スレート材は日本で最も多く普及してる、非常にポピュラーな屋根材です。
しかしながら屋根材の中では耐用年数はもとより『メンテナンス時期がかなり早い』というデメリットがあります(汗)。
スレート材を用いた屋根の『知っておきたい雨漏りリスクと対処法』についてはこちらの記事にまとめていますので、よければ合わせて確認してくださいね。


アスファルトシングル
- 耐用年数:20~30年
- メンテナンス時期:20~30年
アスファルトシングルは海外では一般的ですが、日本で使われ始めたのが2007年頃。ですから、まだ比較的採用されている家屋は少ないかもしれません。
耐用年数は長め、特筆すべきはメンテナンス時期も同じぐらいということ。メンテナンス頻度が少ないので手間も金額的コストも少なくてすみますね!
かなり優れた屋根材でもあるのですが、その特性からちょっと変わった注意点が必要だったりもするアスファルトシングル。その特徴や注意点はこちらの記事にまとめてありますので、ぜひ読んでみてくださいね。

トタン
- 耐用年数:10~20年
- メンテナンス時期:10~15年
最近では新築で採用されることは非常に少なくなりましたが、まだまだ街を見渡すと見かけるトタン屋根。言い換えれば、大半の家屋は『すでに耐用年数・メンテナンス期間に達しているor過ぎている』可能性が高いということ。
トタンは金属製ということもあり、サビに弱いデメリットがあります。耐用年数は短くメンテナンスも必須の屋根であり、雨漏りのリスクが比較的高いと言えるでしょう。
トタン屋根に関する雨漏りリスクと対策についてはこちらの記事にまとめてあります。

ガルバリウム
- 耐用年数:20~30年
- メンテナンス時期:20~30年
こちらもトタンと同じく金属製の屋根材ですが、耐用年数・メンテナンス時期ともにかなり長くなっています。
サビにも強く、雨漏りには強い屋根!…ですが、決してメンテナンスフリーということはないので注意は必要です。
サビに強いはずのガルバリウム屋根が、どのような経緯で雨漏りしていくのか?についてはこちらの記事にまとめてあります。

日本瓦
- 耐用年数:50~100年
- メンテナンス時期:20~30年
これまでの部材に比べて目を見張る耐用年数の日本瓦。粘土を原料とした、日本の代表的な屋根材です。
昔から使われているだけあって耐用年数で言えばトップクラス。メンテナンスは必要ですが、時期も長めの非常に優秀な屋根材と言えますね!
セメント瓦
- 耐用年数:30~40年
- メンテナンス時期:20~30年
同じ瓦であっても、日本瓦と比べて耐久性・メンテナンス時期にはかなりの違いがありますね。
セメントを原料としているため安価ではあります。が、やはり日本瓦よりも耐久性や防水性が弱くなっているのがデメリットでしょう。
ルーフィング
- 耐用年数:15~20年
- メンテナンス時期:15~20年
ルーフィングは、厳密に言えば屋根そのものというわけではなく、防水シートのことです。が、基本どの屋根材の下にも必ず設置されていて、雨水の家屋浸入を防ぐのはこのルーフィングが要になります。
つまり、雨漏り予防にとって非常に重要な役割を担っている…のですが、耐用年数・メンテナンス時期はどちらも短め(グレードによって多少なりとも差はありますが)。
屋根材に問題がなかったとしても、下のルーフィングが劣化してしまうと急激に雨漏りに発展する可能性がありますので、注意が必要です!
外壁の耐用年数とメンテナンス時期
では、次に外壁の部材について解説します。外壁におもに使われる部材は、おもに下記の8つ。
- 窯業系サイディング
- 金属系サイディング
- 樹脂系サイディング
- 木質系サイディング
- ALC
- モルタル
- コンクリート
- タイル
窯業系サイディング
- 耐用年数:20~30年
- メンテナンス時期:7~15年
人気のサイディングの中でも最も人気があり、代表的な材質。
耐用年数も比較的高めですが、メンテナンス時期はかなり早めでもあります。
このように、サイディングは大きく4種類の部材に分かれますが、それぞれ異なった特徴があります。それぞれの特徴をある程度でも把握しておくことが、雨漏り予防に繋がりますよ。
各種サイディングの把握しておきたい特徴につきましては、こちらの記事にもそれぞれまとめていますので、良かったら参考にしてください!

金属系サイディング
- 耐用年数:20~30年
- メンテナンス時期:10~15年
その名のとおり金属を原料にしたサイディングですね。防水性に優れ、メンテナンス時期も少し長めになります。
金属ならではの高い耐久性を誇ります。
が、じつは他サイディングに比べて『デザインの自由度が低い』というデメリットがあったりもします。
樹脂系サイディング
- 耐用年数:20~30年
- メンテナンス時期:20~30年
日本ではあまり普及してませんが、サイディングの中でもトップクラスの耐久性を誇るのが樹脂系サイディング。
かなりハイスペックな部材であり、耐用年数・メンテナンス時期・そして『基本、塗装が不要』という特徴まで併せ持った部材であり、雨漏りリスクはかなり小さいといえます。
ただ、日本国内でこの部材を扱える業者は少なく、かなり高価な部材でもありますので、樹脂系サイディングを採用されている家屋は少ないでしょう。
木質系サイディング
- 耐用年数:15~25年
- メンテナンス時期:8~10年
その名のとおり、木材を使ったサイディング材。
こちらの部材最大の特徴(欠点とも言えますが)は、水分に弱いこと!
そのため、比較的メンテナンス時期が短く、木材ならではのトラブルにも注意が必要です。


ALC
- 耐用年数:60年
- メンテナンス時期:10~15年
サイディングと同じくパネルを張り付けるタイプの外壁材ですが、材質自体が厚くなる分、非常に耐久性に優れており、耐用年数はかなり長めとなっています。
ですが、ALCは防水性が低いので、耐用年数を最大限有効化するためには定期的な塗装メンテナンスが欠かせない部材。そのため、メンテナンス期間が短いのが多少難点ではありますね。
モルタル
- 耐用年数:30年
- メンテナンス時期:8~10年
モルタルは、セメントと砂を混ぜた素材になります。
こちらも部材自体の耐用年数は比較的長めではありますが…じつは、かなり『脆い』部材(汗)。
そのため、特に損傷に弱く、ひび割れなどの外的なダメージに注意が必要な部材です。

また、1つの特徴として『耐水性が低い』という問題もあり、しっかりと塗装メンテナンスを行なっていないと、一気に劣化が進んでしまう危険性もあり、油断はできない部材ですね。
コンクリート
- 耐用年数:60年
- メンテナンス時期:10年
こちらもモルタルと同じくセメントが原料ですが、配合している材料に違いがあって、一緒に砂利も混ぜ合わせているのが特徴。
耐用年数はトップクラスに高い部材です。が、やはりモルタル同様に『耐水性には難あり』という特徴があるため、比較的短期間でのメンテナンスが必要になります。
また、コンクリートはモルタルに比べてデザイン面での柔軟性が利きにくいため、家屋の外壁に採用されるケースは多くないでしょう。
タイル
- 耐用年数:40年
- メンテナンス時期:10年
外壁材の中でも、コンクリートに次いで2番目に耐久性が高いとされているタイル。
タイルは他と比べても塗装のメンテナンスはほぼ不要とまで言われたりする『耐水性の高い部材』でもあります。が、実は継ぎ目に使っているコーキング(継ぎ目を埋める素材)が経年劣化してしまうんですよね。
そのため、こまめなメンテナンス(タイルそのものというより、タイルの継ぎ目に使っているコーキングの)が必要となります。
窓の耐用年数とメンテナンス時期
窓は非常に雨漏りしやすい箇所であり『屋根以上に雨漏りが多い』箇所と言われています(実際、弊社にも窓からの雨漏り相談は非常に多いです)。
といっても、窓によく用いられているアルミサッシは耐用年数は20~30年ほど。ここが劣化すると気密性の低下や雨漏りリスクに繋がるのですが…『雨漏りしやすい!』と言われるほど、短い耐久年数ではないですよね?
じつは問題はサッシそのものではなく
- 窓まわりの外壁部分
- コーキング
といった『窓周辺の部材』が劣化するケースが大半なんですよ(汗)。
特にコーキング材は10年ほどしか保たない素材ですので、定期的なメンテナンスは欠かせません。サッシ本体よりも、そちらの方が注意すべきと言えるでしょう。

バルコニーの耐用年数とメンテナンス時期
あまりイメージがないかもしれませんが、じつはバルコニーはかなり雨漏りリスクの高い場所となっています(その理由は以下の記事にまとめていますので、よかったら参考にしてください)。

バルコニーにて、特に注意したいポイントは次の2つ。
- 笠木
- 防水層
笠木
- 耐用年数:20〜25年
- メンテナンス時期:10〜13年
笠木とはバルコニーの手すり部分、最上部に取り付けられている仕上げ材のことを指します。この部分が経年劣化したことにより、手すりから家屋へ雨水が侵入するケースが多いんですよ。
笠木自体の耐用年数は特に短いというほどのものではありません…が、バルコニーの中でも『特に雨風の影響を受けやすい部位』となるので、メンテナンスは比較的短期に実施することをお勧めします!
防水層
こちらは、ベランダの床面下地に施されている防水層の部分。これが劣化してしまうと床面が剥き出しになり、一気にベランダからの雨漏りリスクが高くなってしまうので注意が必要です。
防水層、おもに以下の3つで構成されています。
ウレタン防水
- 耐用年数:8〜10年
- メンテナンス時期:5年
FRP防水
- 耐用年数:10〜15年
- メンテナンス時期:5〜7年
防水シート
- 耐用年数:12〜15年
- メンテナンス時期:12〜15年
防水層は、いずれの部材も耐用年数・メンテナンス時期どちらも比較的短いのが分かるのではないでしょうか(汗)。こういった理由から、バルコニーは比較的雨漏り被害が発生しやすい箇所であり、また定期的なメンテナンスが欠かせない箇所と言われています。
メイン部材以外にも注意すべきポイントがあり!

ここまでで、各箇所に使われている部材の紹介は終わりです。が…じつは、経年劣化による雨漏りの原因となるのは、これら『以外』の部材にも大きな関連性があります。
それは、各箇所で使われている、以下の『汎用部材』です。
- コーキング
- 塗装材
コーキング
本記事の中にも、何度か『メンテナンス』のお話で名前が出てきましたね。
部材同士の繋ぎ目など、家屋の隙間となる部分を埋める、ゴム状の材質です。外壁や屋根など、家屋の様々な箇所に使用されていて、防水の観点において欠かせません。
ところが、コーキングはかなり耐用年数が短く、一般的に10〜15年ほど。ですから、各箇所のメイン部材における耐用年数雨が高くとも、コーキングを用いる必要がある部材の場合は『メンテナンス時期が短くなる』んですよね(汗)。
一部部材によっては使用しない場合もあります。そういった部材の場合、総じてメンテナンス時期が長くなりやすい傾向があります
塗装材
家屋部材は多くが『塗装』という処理を施されています(この記事にも、何度かワードが登場していますね)。
塗装は見た目的な意味合いももちろんですが…じつは塗装材には『紫外線や雨風を防ぐ』という役割があるんです。特に耐水性が低い部材では、塗装による耐水性フォローが必要不可欠。
そして…この塗装材にも、やはり各部材と同じように耐用年数があるんですね。
- ウレタン:8~10年
- シリコン:8~15年
- ラジカル:12~15年
- フッ素:15~20年
モルタルやコンクリートのような『耐用年数が優れているのに、比較的短期でのメンテナンスが必要』みたいな部材は、この塗装材の劣化による耐水性の低下などが原因になってくるわけです。
塗装剥がれは見た目への影響だけでなく、家屋の耐久性低下にも繋がる現象。軽視するのはNGで
雨漏りの原因となる耐用年数と経年劣化の目安:まとめ

最後に、重要なお話を…。
耐用年数・メンテナンス時期はあくまでも『目安』です。実際には
- 台風などの強風による飛来物で、部材が破損した
- 寒暖差の激しい地域であり、部材の劣化が早まる
- 表面の凍結により、部材の強度が落ちる
- 家屋の構造により雨風や紫外線に晒される量が多く、経年劣化が早まる
…といった感じで、目安となる耐用年数を下回っていても雨漏りトラブルに発展する可能性はやはり存在します。ですから、あくまで『目安』と捉え、過信し過ぎないことが大前提です!
今回の記事が、あなたの役に立つことを願います!
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